【ファッションドリーマー】クリアレビュー 今日も世界でほめられろ♪ 理想空間ではないが、次回作が待ち遠しくなる作品。

ゲームレビュー

製品情報
製品名:ファッションドリーマー
プラットフォーム:Nintendo Switch
開発元:シンソフィア

プレイ状況
プレイ時間:10時間以上
やりこみ度合い:プラチナランク(スタッフロール)到達

この記事に含まれるネタバレ
ゲーム内のスクリーンショット

目指せインフルエンサー!

ファッションドリーマーは「わがままファッションシリーズ」や「MODEL DEBUTシリーズ」といった従来のコーディネートゲームの続編ではない。そのため、これらの作品にあった「店舗経営」や「恋愛要素」などのストーリーを期待すると物足りなさを感じてしまうかもしれない。

しかし、コーディネートゲームとしては他の追随を許さない作品であることは間違いない。
今作の舞台である仮想空間”イヴ”では、1400種類以上の豊富なパーツと、既存のパーツを染色して自分だけの服をつくる”型紙”という機能によって、自分や他のプレイヤーのキャラクターを着せ替えることができる。

服のパーツは「トップス」、「ボトムス」、「ワンピース」、「アウター」、「ソックス」、「シューズ」、「ヘッドアイテム(帽子やカチューシャなど)」や「メガネ」、「イヤリング」など豊富に用意されているため思い通りのコーディネートを実現できる。

また、染色の自由度もかなり高く、例えば画像のワンピースではメインの色の他に襟にある2本のラインやボタンの色まで変えることができる。カラーは画像のようにワンタッチで選ぶこともできるが、思うようなカラーが見つからないときは色の濃さや彩度を調整できるため自由自在だ。

自分だけのコーディネートが完成したら、次は”パシャ活”の時間だ。”フォトエッグ”と呼ばれるタマゴ型のプリクラマシンを使って自分の写真を撮ることはもちろん、インターネットに繋ぐと世界中のプレイヤーと一緒に写真を撮ることもできる。

また、写真のフレームやフィルター、ポーズのほか、”フォトアイテム自販機”で交換したドリンクやドーナツなどのアイテムを持たせることもできる。撮影が済んだら現実の加工アプリでするのと同じようにステッカーでデコって”映える”写真にしよう。

“イヴ”では他のプレイヤーがコーディネートをしたアバターの姿が自分の世界にやってくることがあり、彼らに”いいね”をすることでそのキャラクターが着ているアイテムを入手することができる。この仕様により、着せ替えをしていれば半自動的にたくさんの”いいね”が貰うことができ悪くない気分になる。

私はInstagramやX(旧Twitter)などの現実世界のSNSにはそこまで馴染みは無いが、多くの方が”いいね”を欲しがる気持ちもわかる気がする。

 

仮想空間は理想空間ではなかった

一方で、本作の操作性は良いとは言えない。

例えば、マップを歩くだけでもキャラクターの移動は遅く視点の変更もできない。ゲームのメインであるコーディネートに関しても、完成したコーディネートをお気に入りに登録することが出来なかったり服装の絞り込み機能が不十分だったりと、まったくのノンストレスでプレイできる作品ではないことは確かだ。

並び変えや大まかな絞り込みはできるが、種類が多いため目当ての服を見つけるのに時間がかかる。

そして、最も気になったのは性別に関する仕様だ。
本作では「男性or女性」ではなく「AタイプorBタイプ」といった形式で体型を選択し、パーツによっては片方のタイプでしか身に着けることができないものも存在する。この仕様自体は昨今の行き過ぎた”ポリティカル・コレクトネス”に対するアンチテーゼのようなものが感じられ不満はない。

ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)
特定の集団に対して差別的な意味や誤解を生まないように、差別的な意味を持つ言葉や表現を避けること。
ゲームにおいては必要以上に女性キャラクターをたくましく描いたり、本筋に関係のないLGBTQ要素が盛り込まれたりすることがあり、多くのプレイヤーから嫌悪の対象とされている。

画像はhttps://vr-soku.info/archives/648より。

しかし、問題はパーツが制限される基準にある。

例えば、上段の左から二番目の服を見てほしい。これは”セーラーブラウス”という服で、見た目が可愛いため女性キャラクターに着せようと思ったところ、タイプB(男性)限定の服と表示され、着せることが出来なかった。

セーラー服はもともと男性の海兵隊が着用する制服だったという歴史があるため、この制限はそこからきているのだろう。しかし、この服を見たときに女性キャラクターよりも男性キャラクターに着せたい人の方が果たして多いのだろうかと疑問に思った。

画像はhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%E6%9C%8D#:~:text=%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%E6%9C%8D%EF%BC%88%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%81%B5%E3%81%8F%EF%BC%89%E3%81%AF%E3%80%81,%E8%A5%9F%E3%81%8C%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E3%80%82&text=%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%AD%E3%81%A7%E6%B5%B7%E8%BB%8D%E3%81%AE,%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82より。

本作の舞台である”イヴ”は仮想空間とは言うもののストレスが多い空間であることは確かだ。このような点を踏まえ、本作はどのようなプレイヤーが楽しめる作品なのかを考えよう。

 

そこに着せ替え愛はあるんか?

概して本作はプレイヤーの「着せ替え愛」に多くを委ねていると思う。

例えば、NPCにルカット(NPCの要望に応じたコーディネートを提案すること)をした際、提案したコーディネートがどれだけセンスがなくても、どれだけ要望に沿っていなくても、「色の組み合わせが良い」や「パーツの組み合わせが気に入った」というような言葉しか返ってこない。

とんでもなくダサいコーディネートを提案しても怒られたりはしない。

さらに言えば、コーディネートの出来と貰える報酬の量に大きな相関がないため、適当なコーディネートを提案して数をこなした方が速くランクが上がる仕様になっている。

ストーリーを省略し、ここまでコーディネートに焦点を当てたゲームであるならば、ゲームを進めることでファッションに関する知識を学ぶことができるような機能があれば、プレイヤーが成長を感じられたりモチベーションを保ったりすることができたのではないかと思う。

しかし、良くも悪くもゲームを通して基本的なプレイスタイルは一貫しており、欲しいパーツを身に着けているキャラクターに”いいね”をして使えるパーツを増やし、それを使ってコーディネートをするということを繰り返すだけである。

そうは言いつつも、ゲームシステムにコーディネートのモチベーションを求めるのではなく、純粋にコーディネートを楽しめる方なら本作は至高の一作であることには違いない。

実際に、X(旧Twiter)で「#ファッションドリーマー」と検索すると今でも楽しんでいるプレイヤーも多く、そのようなプレイヤーにとっては上で述べたような欠点は些末なものだと補足しておく。

結論として、本作は改善点こそ多いものの自由度の高いコーディネートを楽しみたいプレイヤーにとっては唯一無二の作品である。そして、これまでそのようなゲームを遊んだことがない私に新たなジャンルを教えてくれたという点で好きな作品でもあり、次回作でより究極のコーディネートゲームに進化することを期待を込めて筆を擱こうと思う。

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