【スプラトゥーン3 サイド・オーダー】クリアレビュー 失われた色を取り戻せ! ”秩序”に抗(あらが)うタコの物語は秩序にあふれた方法で紡がれていた。

ゲームレビュー

「スプラトゥーン3 サイド・オーダー」は”秩序”に抗(あらが)う物語でありながら、そのゲームシステムは非常に合理的で秩序にあふれたものとなっている。

製品情報
製品名:スプラトゥーン3 サイド・オーダー
開発元:任天堂
プラットフォーム:Nintendo Switch

プレイ状況
プレイ時間:約15時間
やりこみ度合い:ストーリー13周クリア、全パレットクリア、虹バッジ取得

この記事に含まれるネタバレ
ゲーム画面のスクリーンショット

ぬりたく~るテンタクル!

「スプラトゥーン3 サイド・オーダー」は本編とは別売りの「エキスパンション・パス(3,000円 税込)」を購入するとプレイできるダウンロードコンテンツだ。

オープニングではおなじみの列車に乗っており、初めてバンカラシティに来た時のことが懐かしい。しかし、突然ノイズのようなものが現れて主人公は意識を失ってしまう。

目を覚ますと辺り一面真っ白な世界に飛ばされており、主人公はいつもの姿ではなく「8号(ハチ)」と呼ばれるタコの姿になっていた。

ハチの目の前に現れたのは、ドローンのような姿に変えられてしまったテンタクルズのヒメだ。

テンタクルズ
毒舌ラッパーの”ヒメ”としっかり者で天然なDJ”イイダ”の二人が結成したアーティストグループで、「スプラトゥーン2」のヒロインを努めた。
彼女たちの合言葉である「ぬりたく~る、テンタクル!」はゲームタイトル名の候補でもあった。愛称が「スプラ」ではなく「ぬりたて」になっていたかも・・・?

画像はhttps://www.nintendo.com/jp/character/splatoon/music/2/index.htmlより。

ヒメによると、ここは「スプラトゥーン2」の舞台である「ハイカラスクエア」が生まれ変わった「秩序の世界」という場所のようだ。「ハイカラスクエア」で見られるカラフルな風景とは程遠く、色が失われ、住民はどこかへ消えてしまっており、目の前には「秩序の塔」と呼ばれる塔がそびえたっている。

相棒のイイダは「秩序の塔」に囚われてしまっているようで、ハチはヒメの援護を受けながら「秩序の塔」を登ることになる。

「サイド・オーダー」はアクションシューティングはもちろん、トライアンドエラーを繰り返しながらダンジョンを攻略する”ローグライト”という要素を持つ作品だ。

ローグライク
1985年に発売された「ROGUE」というゲームに由来にする。プレイするたびにマップやダンジョンが生成され、ゲームオーバーになると始めからやり直しになるゲームのこと。ローグライクの要素を一部持っているものを特にローグライトという。

画像はhttps://store.steampowered.com/app/1443430/Rogue/?l=japaneseより。

それと同時に、オクタリアン(タコ)たちの物語が語られる貴重な場でもある。塔を登るにつれて「秩序の世界」とは誰が何のために創り、「秩序の塔」の最上階には何が待ち受けているのか、そしてそれがオクタリアンたちとどのような関係があるのかが明かされていく。

物語だけで言えばボリュームが大きいわけではないが、毒舌ながら前向きでカリスマ性のある「ヒメ」と、そんなヒメが好きでたまらない天然な「イイダ」、クールでしっかりものな「ミズタ」など、魅力的なキャラクターたちの姿が印象的であった。

また、「スプラトゥーン」ならではのイカした演出も見逃せない。「スプラトゥーン」はシオカラーズやテンタクルズ、すりみ連合といった音楽に関するグループがヒロインを努めており、本編でも彼女たちが奏でる楽曲は大きな魅力の一つだ。それは「サイド・オーダー」でも例外ではなく、彼女たちのイカした楽曲で熱く盛り上がる場面があった。

私のように「スプラトゥーン2」をプレイしたことがなくヒメやイイダについて知りたい方にも、すでにスプラトゥーンの世界観に詳しく、それが好きだという方にも満足できる内容になっている。

 

秩序まみれなローグライト

基本的なゲームプレイとしては、「秩序の塔」を一階ずつ登って行き最上階にいるボスを倒すという形だ。先に説明したローグライトという形式をとり、繰り返し遊ぶことを前提とした作りになっている。

各階のステージはランダムに生成された三種類の部屋から一つを選択することになる。部屋には「かんたん」「ふつう」「むずかしい」などの難易度があり、難易度が高いほどクリアした際に多くの”ネリコイン”が貰える。

また、ステージを選択すると「8号」に特別な効果が付与される。これには「インク効率アップ」や「スペシャル増加量アップ」のようなナワバリバトルなどでもおなじみの効果もあれば、「ダメージアップ」や「射程アップ」、「連射速度アップ」のようなここでしか体験できないものもあり、本編をやり込んでいるプレイヤーでも新鮮なバトルを楽しむことができる。

なお、これらの効果はステージのクリア報酬ではなくステージに挑戦する際に付与されるため、難しいステージであっても「新しくゲットした効果を利用して頑張ろう!」という気持ちになるのも良い所だ。ちなみに、各ステージは30秒~3分ほどでクリアできるようになっており、クリア時の演出なども最低限であるためサクサクとプレイできる。

「トラブル」を避けたばかりに、どのフロアも選びたくないような難易度に・・・

また、ステージには「ボーナス」や「トラブル」といった特殊効果がかかっていることがある。
「ボーナス」はプレイヤーが大幅に強化されたり報酬が多くなったりする一方で、「トラブル」は敵が強化されたりマップが暗闇になり視界が悪くなったりする。

では、「トラブル」は選択しなければよいと思うかもしれないが、何度も「トラブル」を選択しないでいると出現頻度が段々と高くなってきてしまう。上の階に行くほど難しいステージが増えてくるため、ステージが「高難度」×「トラブル」で埋まらないように低層階のうちに処理しておこうという戦略が生まれてくるわけだ。

このような合理的で秩序のある仕様により、プレイヤーの選択次第で難易度を調節可能であると同時に、ある程度の難易度が担保された作品になっている。

 

すべてのタコに向けたローグライト

ある程度の難易度が担保されていると言うと、特にローグライトについて慣れ親しんでいない方には難しく感じるかもしれない。しかし、十分な救済措置が用意されているため心配は無用だ。

塔の途中でゲームオーバーになるとそれまでに貰ったネリコインが”真珠”というアイテムに変換されるのだが、これを機械に強いイイダに渡すことで、「秩序の塔」をハッキングして攻略を楽にしてくれる。

ハッキングを行うと、恒常的に攻撃力が上昇したり残基が増えたり、ヒメの援護が強力になったりするほか、ステージの内容を攻略しやすいものに変更したりすることも可能になる。

また、塔の内部には「自動販売機」が設置されていることがある。自動販売機では商品がランダムに販売されており、カラーパレットを購入してハチを強化したり、サブウェポンやスペシャルウェポンを入れ替えたりすることもできる。

さらに、ハッキングを行うことでネリコインを使って自動販売機の商品を入れ替えることができるようになる。これにより、お目当てのカラーパレットやサブウェポン、スペシャルウェポンを厳選することができる。

フロア選択や自動販売機によってカラーパレットを厳選していくと、「チャージショットを連射できるチャージャー」や「パブロ並みの速度で攻撃できるワイパー」など、サーモンランで使えるクマ武器以上に強力な武器を使えるようになる。

ミスをしながらも少しずつキャラクターを強化していき、最終的に厳選などを行うことで最強のキャラクターが完成するというのはローグライトの醍醐味だろう。

ちなみに、強化の元となる武器は「秩序の塔」でボスを倒してカギを手に入れることで、「秩序の塔」の前に置かれたロッカーから入手できる。

各武器は「スプラトゥーン」に登場するシオカラーズやテンタクルズのメンバーたちが使っている武器をモチーフにしている。推しのキャラクターがいる方は是非ともその武器で最上階を目指そう。また、中にはハッキングとは対称に「縛り要素」が課される武器も存在するため、クリアに慣れてきたらこちらも挑戦してみよう。

ボリュームとしては初回プレイは約3時間、すべての武器でクリアするために追加で約7時間、最難関の縛り要素をクリアするために追加で約1時間といったところだ。プレートやギアなどの報酬も多数用意されているため、すべての報酬を取ろうとするとそれ以上に楽しむことができる。

 

登り詰めたのはタコじゃない

さて、「サイド・オーダー」はタコが「秩序の塔」を登る物語であったが、登り詰めたのはタコだけでないことを忘れてはならない。

https://www.nintendo.com/jp/topics/article/fc5a4a4b-6a02-4389-9dce-e71bac75d97c

2015年にWii U用アクションシューティングゲームとして発売された「スプラトゥーン」。

3作目のDLCが配信された現在でもその歴史は10年に満たないが、今や「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」、「どうぶつの森」などと同列に任天堂の主要タイトルとして扱われるところまで登り詰めた。

【社長が訊く『Splatoon(スプラトゥーン)』】

【社長が訊く『Splatoon(スプラトゥーン)』】によると発案当初は「豆腐」と「ごま豆腐」の陣取りゲームであったようだ。そこから議論を重ね、最終的に愛らしい「イカ」や「タコ」になったことで、ツルツルな豆腐には難しかったであろう高みにまで登りきることができた。

また、今月開催された「バンカライブ」も大盛況を博したりセブンイレブンや一番くじとコラボしたりと、イベント進出やグッズ展開に関しても順風満帆な「スプラトゥーン」。

次世代機でも新たな楽しみを提供してくれることに期待していても良さそうだが、まずは3月1日に配信されるアップデートを心待ちにしていよう。

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