【ドラゴンクエストモンスターズ3】クリアレビュー ”ひいき目”で見ると、過去の純粋な冒険心を揺さぶる待ち望んだ作品

ゲームレビュー

「ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅」は純粋な冒険心を呼び戻すには十分だが、名作と言うには”ひいき目”で見ていることを認めざるを得ない出来だと思う。

製品情報
タイトル名:ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅
開発元:SQUARE ENIX

プレイ状況
プレイ時間:40時間(→70時間)
やりこみ度合い:メインストーリークリア(→モンスター図鑑コンプリート達成)

この記事に含まれるネタバレ
オープニングのあらすじ
一部ムービーやゲーム画面のスクリーンショット

もう一度、無垢な冒険者になってみた

「DQMジョーカーシリーズ」や「テリーのワンダーランド」、「イルとルカの不思議な鍵」に時間を忘れて熱中したのは約10年も前のこと。

初代ジョーカーを遊んでいたころは”ブラックドラゴン”が最強クラスのモンスターだと思っており、友人と初めて対戦した時にSSランクのモンスターに負かされ、驚きと悔しさを感じたのが懐かしい。

久々のDQMが発売されるということで、どのように進めていこうかと考えた。
上記のタイトルを遊んでいた頃と比べたら、年齢的にも時代的にも、書籍やインターネットで調べれば簡単に強いモンスターを作れるようになった。

しかし、ストーリーをクリアするまではあえて配合チャートなどは調べず、昔のように手探りで進めてみることにした。「配合で好きなモンスターを作れた時の嬉しさ」や「フィールドで強そうなモンスターを見つけたときの喜び」をもう一度感じたかったからだ。

牧場でくつろぐモンスターに意味もなく話しかけて癒されたり、

初めてメタル系のモンスターを仲間にしてガッツポーズをしたり、

ふと空を見上げるとスライム型の星座を見つけて感動したりと、

童心に帰ってDQMシリーズの楽しさを再認識するには十分な作品だと思う。

また、今作のモンスターは個体ごとに大きさが異なるのも特徴的だ。
画像のように一目でわかるくらい大きさにバラつきがあり、通常はSサイズの”パールスライム”でも特に大きい個体はLサイズとして仲間にできる。

さらに、今作には”検索配合”というシステムがあり、これを使えば手持ちのモンスターから配合できるモンスターが一覧にして表示される。”ランク”や”種族”などによって絞り込むことも可能だ。
攻略を見ずに進めていたということもあり、検索配合で好きなモンスターが表示されたときはとても嬉しく、早速配合したものだ。

概して、今作は”配合”を主としたモンスターの育成に関するシステムに関しては過去の作品から良い所を引き継いでおり、それに加えて新要素も上手く盛り込めている良作だと思う。

 

寡黙な主人公は、いつもプレイヤーの分身だった

それではシナリオの話をしよう。

多くの方がご存じの通り、「ドラゴンクエストシリーズ」の主人公は身振りで意思を伝えることはあっても、プレイヤーが会話の内容を知る形で発言することはほとんどない。
それでもこれまで成り立ってきたのは、プレイヤーの想いと主人公の行動に齟齬(そご)が少なかったからだと思う。

https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1409/25/news112.html

「DQⅢ」では王様の命令により”魔王バラモス”の討伐を目指し、「DQⅤ」では亡き父”パパス”の遺志を継いで”ゲマ”の討伐を決意する。そんな主人公たちの行動に違和感を持ったプレイヤーはほとんどいないだろう。

しかし、本作の主人公”ピサロ”はどうだろう。

愛する母の死をきっかけに、魔族である父”ランディオル大帝”への復讐を決意する。しかし、まだ幼いピサロは返り討ちに遭い、父を含む魔物に攻撃できなくなる呪いをかけられてしまう。そのため、魔物を使役するモンスターマスターとなることで父を討とうと旅に出る。

導入はドラゴンクエストらしさが感じられてよいのだが、その道中でピサロがとる選択にいまいち共感できないことが多く、ストーリーを通してとても感情移入することができなかった。

考えてみてほしい。
DQⅢで王様からバラモス討伐の命を受けた主人公が「自分のやり方で父の遺志を継ぎます。」と断ったらどうだろう。DQⅤでパパスの死を目前にした主人公がゲマを恐れて商人を始めたらどうだろう。
それはそれで見てみたい気もするが、プレイヤーとしては歯がゆい気持ちでいっぱいになり感情移入できなくなってしまうと思う。

今作にはそのような展開が多く、主人公が何を考えているのかよくわからないため次の目的地がわからなくなってしまったり、「そっちの選択をするの?」と悪い意味で予想を裏切られたりすることもあった。

シナリオプランナーの方々が懸命に考えたストーリーを真っ向から否定するのは好きではないし、なかにはDQMらしい愉快なムービーもあり面白い場面があったのも事実だ。

しかし、ストーリーの出来云々の前に「寡黙な主人公はプレイヤーの分身であるからこそ成り立っていた」ということを忘れてしまっているように感じられたことが、何より残念でならなかった。

以下、若干のネタバレあり。

また、ムービーの出来も芳しくない。

ツッコミたくなる場面はいくつもあったが、とあるボスに仲間のモンスターをどこかへ飛ばされてしまい、ピサロが追い込まれる場面がある。
しかし、ムービーが稚拙でそもそも仲間が飛ばされたことに気づかず、「魔物がボスに取り込まれた」のか「相手の魔物がルーラで逃げた」のかと勘違いしてしまったほどだ。

ちなみに、その数秒後に別の仲間たちが飛ばされたモンスターを連れてきてくれて盛り上がる(?)シーンになるのだが、あまりにも展開が急すぎて「一体何を見せられているのだろう。」と感じてしまった。

 

小さな達成感の積み重ね

そんな今作でも、止め時が見つからず子どもの頃にそうだったようについ夜更かしをしてしまうのはなぜだろう。

思うに、DQMシリーズは小さな達成感を次々と感じられるからではないか。

「このモンスターが配合できるLVまで上げたら一度中断しよう。」
「LVが上がった。やっぱり配合してからやめよう。」
「新しいモンスターが生まれた。このモンスターを配合に使ったら何ができるんだろう。」

レベル上げや配合によってモンスターはどんどん成長していくわけだが、プレイヤーはその成長度合いを、モンスターのランクや見た目、ステータスの数値といった目に見える形で知ることができる。

しかも、配合やレベル上げにプレイヤーの練度は不問であり、誰でも簡単に、そしてひとつひとつは比較的短時間のうちに達成できるようになっている。

過去作でもすでに完成されていたDQMの育成システム。
今作ではさらに”個体差”を導入することで、半ばルーティン化してしまいがちな育成を少しでも飽きさせなくしたり、”検索配合”によってたくさんのモンスターと出会う機会を与えたりすることで、冒険者をよりやみつきにさせることに成功している。

また、フィールドにいるモンスターが気ままに行動しているのも良い所だと思う。

宝箱の番を忘れてうたた寝をしてしまっていたり、講義中(?)に先生の目の前で寝ている仲間を見て焦っていたり、フィールドを走っているだけでモンスターの可愛らしい姿が視界に入ってくる。

「スーパーマリオブラザーズワンダー」のレビューでも触れたが、そのゲームの世界にいるキャラクターがただのオブジェクトではなく、”そこで生きているキャラクター”として存在していることは個人的に評価したい。

 

僕らはモンスターが大好きで、ずっと、ずっと、旅していたい

https://dengekionline.com/articles/166519/

「DQMシリーズ」としては約6年ぶり、ナンバリングとしては約10年ぶりに満を持して発売された本作。DQMシリーズが他では替えられないシリーズであることから、モンスターズファンとして楽しめたのは間違いないが、粗が目立つ作品であったとも言わざるを得ない。

過去作では本編に含まれていた「一度仲間にしたモンスターを仲間にしやすくなるコンテンツ」をDLCとして販売した挙句、その使い勝手も劣化していたり、

DQMで最も利用する施設である”配合所”がルーラ地点から離れた場所にあり、通り道に段差やNPCといった障害物が配置されていたり、

個体ごとのサイズが様々になったとはいえ、3枠・4枠モンスターが廃止されてしまっていたり、

これまでゲームをプレイしていてそこまでフレームレートについて気にしたことがなかった私でも、画面のカクつきを何度も気にしてしうほど最適化が不足していたり、

シナリオに至っては”DQⅣをプレイしていなかったり””原作の改変を嫌う人には合わない”とかそういうレベルではない出来になってしまっていたり、

この作品がDQMでなければ擁護できない部分が多かったことは今作のレビューをするにあたり避けては通れない。

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.4gamer.net%2Fgames%2F440%2FG044012%2F20230527003%2F&psig=AOvVaw0xniLuq9UpJOxsghRvRsBX&ust=1713353389873000&source=images&cd=vfe&opi=89978449&ved=0CBQQjhxqFwoTCPC3nvTQxoUDFQAAAAAdAAAAABAE

はじめて出会ったモンスターに運命を感じて、スライムを魔王よりも強くしようとして、配合パターンを夜中まで研究をして、時にはモンスターの背中に乗ってフィールドを駆け回った冒険者たち。

そんな冒険者の一人である私は”ひいき目”で本作を楽しいと感じているのかもしれない。しかし、「ドラゴンクエストモンスターズだから許せる」作品では決してあってはならないと思う。

「ドラゴンクエストジョーカー」や「テリーのワンダーランド」をプレイして感じた、モンスターとずっとずっと旅していたいという気持ちを取り戻させてくれる次回作を期待したい。

コメント