【アーマード・コアⅥ】クリアレビュー 火をつけろ、燃え残った全てに フロムソフトだからこそ到達した極上のゲーム体験

ゲームレビュー

20時間で最高の体験をしたいと言われたら、私は迷わず「アーマード・コアⅥ」をプレイすることを勧めるだろう。

プレイ状況
プレイ時間:約20時間
やりこみ度合い:ストーリークリア、アリーナ(闘技場)全クリア

この記事に含まれるネタバレ
簡単なあらすじ
一部ムービーやボス戦のスクリーンショット
ストーリーの根幹に触れるネタバレは無し

621 仕事の時間だ

まずはアーマード・コアⅥのストーリーを簡単に紹介しよう。

アーマード・コアⅥのストーリーは主に一つの惑星で描かれる。
その惑星は“ルビコン”と呼ばれ、”ルビコニアン”という人々が暮らしていた。

ルビコンにはかつて“コーラル”と呼ばれる資源があった。
コーラルは他の資源とは比較にならないほど莫大なエネルギーを有していたが、あるとき周辺の星系を巻き込むほどの大災害を起こした。
これを“アイビスの火”という。

アイビスの火から約半世紀、焼失したはずのコーラルが再び確認された。

夢のような資源があれば我が物にしたくなるのが人間の性である。
コーラルはいずれ戦火の火種となり、コーラルの守り手たる”ルビコン解放戦線”や、コーラルを手中にせんとする“惑星外企業”、ルビコンの封鎖・隔離を目的とした“惑星封鎖機構”による争いが絶えなくなった。

コーラルを巡る争いには他にも忘れてはならない存在がいた。
解放戦線や惑星外企業から金で雇われ戦地に赴く、“独立傭兵”である。

独立傭兵の一人“C4-621”は、”ウォルター“と称するハンドラー(主人)に拾われ、ルビコニアンや惑星外企業、ときにそれら以外の者達からの依頼をこなしていくことでコーラルを巡る争いの鍵となっていく。

621とはもちろん、あなたのことだ。 

 

「面白い」が凝縮されたストーリー

近年では「ELDEN RING」や「ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム」のような大ボリュームのゲームが発売され、ゲームを購入するか否かの判断材料としてボリュームを挙げる方も多い。

もちろん、ゲームクリアのための所要時間とやりこみのための所要時間は異なるし、本作もやりこめばこれらのゲームと同じくらい楽しめるだろう。

しかし、アーマード・コアⅥはストーリーだけで言えば約15~20時間ほどでクリアできるほどのボリュームだ。だが、長くないからこそ濃密で凝縮された、常に「面白い」と感じられるものに仕上がっている。

フロム・ソフトウェアのゲームは”多くは語らない”ものが多く、ストーリーがよくわからないままクリアしてしまうことも少なくない。しかし、本作のストーリーはそれらのゲームよりも格段にわかりやすく、感情移入もしやすいように感じた。

本作はミッション(モンスターハンターでいうクエストのようなもの)形式でストーリーが進行するのだが、ミッションの開始時と終了時にキャラクター同士の無線通信が挟まれ、そこでの会話によってストーリーを理解していくことになっている。

そしてこの会話が非常に面白い。困難なミッションを達成しても会話は二、三言ほどしか交わされないことが多いが、どの会話も無駄がなく、物語を上手く説明できており、それでいて復唱したくなるほどかっこいい。

時折、選択ミッションが出現しプレイヤーの選択によってストーリーの展開が大きく変わることもある。なかには自分が選んだ選択に心苦しくなるようなものもあり、涙ぐみながらミッションを進めることもあった。それほどまでに心を動かされるのだ。

“ハンドラー・ウォルター”も”ルビコン解放戦線”も、”惑星外企業”も”惑星封鎖機構”も、皆それぞれの正義を持っている。
しかし、それは主人公である”621″も同じである。ルビコンの命運はあなたが決めるのだ。

 

自由なアセンブルと、逆説的に生じる制限

アーマードコアⅥでは右手・左手・右肩・左肩・頭・胴・脚に至るまで、プレイヤーの好きにパーツを組み合わせ(アセンブル)できる。

始めのうちは「AP」や「積載上限」、「EN負荷」といった聞きなれない単語に困惑してしまうが、アセンブル画面で各項目の説明を見ることができるため、ここで敷居が高いと感じてしまうのはもったいない。

また、武器の買値と売値が同額なため気軽に新しい武器を購入して試してみることができたり、アセンブル画面やパーツショップでは武器を使用した際の動画を再生することができたりするなど、これまでロボゲーをプレイした経験がないプレイヤーにも親切な作りになっていると感じた。

かくいう私も今作が初めてのロボゲーだったが、アーマード・コアⅥのおかげでロボットをカスタマイズする楽しさを知ることが出来た。

本作の機体はその脚部によって大きく4つに分けられる。クセがなく動かしやすい「二脚」、跳躍力に優れた軽量な「逆関節」、ホバリングや重火器による攻撃が得意な「四脚」、小回りの性能と引き換えに火力と耐久力を手に入れた「タンク」だ。

後にも触れるが本作にもフロム・ソフトウェアの他作品と同様に多くの難所があるのだが、先に述べた4種類のどれを選ぶかによって難易度が大きく変わる場面も少なくない。
そのため、「このミッションでは逆関節を使い、このボスにはタンクで挑もう。」と半ば決められてしまっているように感じるときもあり、豊富な選択肢が逆説的に攻略の幅を狭めているように思える瞬間があったのは事実だ。

ただ、これは悪い点だと言っているわけではない。「このボスにはどのような機体が有利だろうか。」と考えながらアセンブルして試行錯誤するのは本作の醍醐味の一つでもあるし、よほど突飛なアセンブルでなければこの機体ではこのミッションはクリアできない」といったことはないので安心してほしい。

 

無機質なロボットにここまで惹かれるのか

C4-621、G1 ミシガン、VⅡ スネイル、VⅣ ラスティ、シンダー・カーラ・・・
キャラクターの名前は記号交じりの複雑なものが多く、無論見た目も無機質な機械だ。

正直に言うと、私も途中までどのキャラクターがどの陣営に所属しており、機体はどんな見た目で、どんな思惑があるのかということを整理できていなかった。

だが、ストーリーがわかりやすいことに加えてどのキャラクターも非常に個性的であるため、ストーリーをクリアしたときには、どのキャラクターに関しても「このキャラクターはこういう性格で、こういうところが良いんだよね。」と語れるほどになっていた。

C4-621を戦友と呼ぶ仲間想いな”いいヤツ”や、自分を殺しに来たものをご友人と呼ぶ”イカれたヤツ”など魅力的なキャラクターばかりだ。

常に死と隣り合わせな荒廃した世界ゆえにキャラクターの本当の性格というものが現れているからこそ、個性を感じるのだろう。

 

フロム・ソフトウェアはいつだってそうなんだ

ここまで難易度についてあまり触れていなかった。

あの「フロム・ソフトウェア」のゲームだ。
戦いの最中は手に汗握り、撃破したときには心臓の鼓動が聞こえてくる。そのようなボスはルビコンでも健在だ。

チュートリアルのボスでさえ強く、操作に慣れるまでは、いや、操作に慣れてからもきっと何度も何度も死ぬ。
でも安心してほしい。よほど「アーマード・コア」シリーズに慣れている方以外は皆同じだ。それでもこれだけ評価されているということは、その過程もたまらなく面白いということだと言えるだろう。

“フロム節”が炸裂しているのはバトルだけではなく、キャラクターのセリフやムービーの演出も例外ではない。

声優のキャスティングもうまく嚙み合っており、フロム・ソフトウェア特有の粋なセリフを聞くのは心地よく、現在2周目をプレイ中だがスキップせずに聞き入ってしまう。
また、一部のボス戦での演出は初めて見たとき鳥肌が止まらず、撃破したあとすぐにリプレイミッションでやり直してしまったほどだ。

概して、アーマード・コアⅥは面白すぎるのだ。
レビューはこれくらいにして、私は次の”仕事”を始めてこよう。

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