スーパーマリオブラザーズワンダーは、幼少期にスーパーマリオをともにプレイした級友/旧友に、「今のマリオはこんなんなんだよ。」と誇らしげに伝えたくなるような出来に仕上がっている。
製品情報
製品名:スーパーマリオブラザーズ ワンダー
プラットフォーム:Nintendo Switch
開発元:任天堂
プレイ状況
プレイ時間:30時間以上
やりこみ度:全やりこみ要素(ステージクリア・ワンダーシード・10フラワーコイン・ゴールポール・バッジ・パネル)制覇
この記事に含まれるネタバレ
一部ステージのスクリーンショット
タイトルを背負うに恥じない「ワンダー」
本作のレビューをするにあたって、”ワンダーフラワー”について触れないわけにはいかない。
ステージのどこかに隠されたワンダーフラワーを取ると、ステージがおもしろおかしく変化する。ステージが変化すると書くと、簡単なギミックが出てきたり強制スクロールになったりするだけではないかと思うかもしれないが、ワンダーフラワーの影響はそれどころではない。
例えば、土管の中に隠れていたパックンフラワーが一斉に出てきてマーチを歌い始めたり、マリオシリーズではおなじみのテレサの親玉”キングテレサ”が現れて歌いながら追いかけてきたり、音楽と絡めた演出が代表的だ。
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他にも戦艦に乗って大砲をぶっ放したり、カラフルな蒸気を出すキラーに乗って空を旅したり、しばらく2Dマリオシリーズをプレイしていない方であれば「これって本当に2Dマリオなの?」と思ってしまいそうなほど”ワンダー”だ。
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ワンダーフラワーはステージのどこかに隠されているため、見つけるためにはブロックをこわしたり土管の上でしゃがんでみたりする必要がある。そのため、ワンダーフラワーを探すという行為をわずらわしいのではないかと感じる方もいるかもしれない。
しかし、ワンダーフラワーはすべてのステージに用意されているにも関わらず、使いまわしは少なくあっと驚く仕掛けばかりなため、「このステージではどんな変化が起こるんだろう?」という好奇心が勝ることを保証しよう。
マリオだって道中楽しみたい!
「スーパーマリオシリーズ」はコミックやグッズが豊富で、そこでは感情豊かなマリオたちの姿が見られるため、「スーパーマリオシリーズ」のキャラクターと言えば笑顔で元気なイメージを持っている方がほとんどだろう。
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特に「スーパーマリオくん」を読んだことがある方は、周りのキャラクターのボケに「〇〇すなー!」と元気にツッコんでいる姿を容易に想像できるはずだ。
しかし、これまでの2Dマリオではどうだろう。ゲームの性質上、当然と言えば当然なのだが、ストーリーを通してキャラクターの感情を読み取れる場面は少なく、クッパを倒すためにただ進んでいく機械的な存在にも思えるのではないだろうか。
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Nintendo 開発者に訊きました
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Nintendo 開発者に訊きました
一方で、今作はマリオたちの表情やしぐさにもこだわりが感じられる。
「開発者に訊きました」によると、プレイヤーがマリオたちの表情を見やすいように(正面から見るとあえて不均等なように)3Dモデルを調整していたり、ジャンプすると大きく手を広げるといったポージングにも多くの工夫を加えていたりする。
また、感情豊富なのはプレイアブル(操作できる)キャラクターだけではなく、クリボーやノコノコといった敵キャラクターも同様だ。敵同士がぶつかると挨拶をしたり、ファイアボールが目の前に迫るとあたふたした様子を見せたり、ただそこを移動するだけのオブジェクトに感じることはもうないはずだ。
今作の愉快な世界について語るなら、”おしゃべりフラワー”も忘れてはならない。
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彼らはステージのいろいろな所に咲いており、近づくと話しかけてくれる。
ステージの特徴について言及したり、攻略のヒントを教えてくれたりする場合が多いが、会話のなかにはマリオたちではなくプレイヤーへ向けたメタ的なメッセージもあり、「クスッ」と笑ってしまうこともあった。
おしゃべりフラワーがうるさいと感じる方は設定でOFFにすることができるのだが、この設定にするとおしゃべりフラワーが「そんなにうるさかった?」と話すなど、設定画面まで遊び心は満載だ。
楽しそうに冒険するマリオたちの姿には親しみがわき、ワンダーの世界でキャラクターたちは”生きている”のだなと感じられた。
ゆるいオンラインは、横にプレイヤーを感じさせた
ニンテンドーダイレクトで、オンラインマルチプレイができると知ったときに歓声を上げたのは私だけではないはずだ。
今作では”タマシイ”という機能が用意されており、オンラインプレイ時にミスをして死んでしまっても、仲間やパネル(プレイヤーが好きな場所に置ける)に触れるとその場で復活することができる。
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この機能を初めて知ったとき、まず「DARK SOULS」や「デス・ストランディング」のオンライン要素を思い浮かべた。前者では”血痕”や”メッセージ”というシステムによって他のプレイヤーから攻略のヒントを得ることができ、後者では広大なフィールドを移動する際に他のプレイヤーが建築した建造物を利用することができる。
どちらも他のプレイヤーと直接関わることはないが、”どこか”で”誰か”の力になることができる。今作のオンライン要素もそういうものだろうという認識だった。
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DARK SOULS REMASTERD WEB MANUAL
実際ほとんどのステージではミスをしたときに復活させてもらったり、謎解きのヒントを暗に示してもらえたりはしたものの、良くも悪くも他のプレイヤーを特段意識したことは少なかった。
しかし、本作のオンライン要素の真骨頂は最終盤で訪れた。すべてのやりこみ要素を制覇すると挑戦できるようになるステージがあるのだが、お察しの通り非常に難易度が高い。どれくらい難しいかと言うと、先に述べた協力目的でステージに潜ってくれているプレイヤーがいるほどだ。初めてそのようなプレイヤーを見たときは「親切な人もいるもんだな。」というくらいにしか思っていなかった。
しかし、自分がミスをしたら仲間が復活させ、仲間がミスをしたら自分が復活させ・・・ということを繰り返すうちに、言葉を交わしていないにも関わらず二人三脚で難所を乗り越えていくようになり、たまたまオンラインで一緒になったプレイヤーがいなくてはならない存在に変わっていった。
そして、そのプレイヤーとあたかもローカルで(横で)ともに遊んでいるような感覚に陥ったのだ。
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感覚的なものなので伝わらないかもしれないが、私は「コミュニケーションの手段が限られているゲームで、一期一会のプレイヤーとだんだんと意思の疎通が取れていく瞬間」が大好きだ。
このステージを周回して手助けをしてくれているプレイヤーも、もしかしたら私と同じような気持ちでいたのかもしれないと思うと妙に納得してしまった。そして、そんな大好きな体験をさせてくれた本作を一層好きになった。
今作もきっと、少年少女の思い出になる
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最近、ゲームをプレイしていて思うことがある。今の子どもたちは小さな頃から「スーパーマリオオデッセイ」や「スプラトゥーン3」、「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」のような作品を遊ぶことが出来るのか、と。そこには複雑な操作をこなせることへの感心と、ちょっとした羨ましさが含まれている。
それでも、幼少期のゲームの思い出というのはどの世代のゲーマーにも平等だ。私の場合は、”級友”とともに「New スーパーマリオブラザーズ Wii」を遊んでいたのを鮮明に覚えている。その”旧友”たちのなかで今でもゲームをプレイしている人は少ないだろうが、彼ら彼女らに本作のパッケージを片手に今の2Dマリオの進化を伝えたいと切に思う。
そして、これまでの「スーパーマリオシリーズ」が今の大人の心を鷲掴みにしたように、「スーパーマリオブラザーズワンダー」もまた、今の少年少女の思い出になることは間違いないだろう。
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