「グランブルーファンタジーリリンク」は王道な物語を通して開発陣の「グラブル」に対する愛と熱意を直球で伝えてくれ、シリーズ未経験でもその想いを全力で受け止めることができる作品となっている。
製品情報
製品名:GRANBLUE FANTASY: Relink
プラットフォーム:PS5/4
開発元:Cygames
プレイ状況
プレイ時間:20時間
やりこみ度合い:メインストーリークリア、追加ストーリー攻略中
この記事に含まれるネタバレ
ゲーム内のスクリーンショット
こういうのでいいんだよ
「グランブルーファンタジーリリンク」のストーリーは良くも悪くも王道そのもので、ところどころに驚きの展開がありつつも、大筋は”よくある”流れで終わりまで進んでいく。
このような言い方をするとややチープな印象を与えてしまうかもしれないが、決してそうではない。
私が最近プレイしているゲームで言うと、「バルダーズ・ゲート3」のような膨大なテキストが用意された抜け目がなく長大なストーリーや、「THE LAST OF US PARTⅡ」のような残酷ながらリアルさを追求した唯一無二のストーリーなども、ゲームで体験でき得るストーリーの1つの完成形であることは間違いない。
しかし、「グランブルーファンタジー」と聞いて少しでも興味を持った方々は、「仲間たちと助け合いながら敵を倒し、一度は敗北を喫したり、時には敵と共闘したりしながら、攫われたお姫様を取り戻し、悪の元凶を成敗して世界を救う。」という少年漫画のようなストーリーも嫌いではないだろう。
本作はそのような「誰もが幼いころに一度は夢見た冒険」をゲームという形で体験させてくれる。
特にメインストーリー終盤からの盛り上がり様は半端なく、壮大な演出に冒険心を揺さぶるメインテーマも相まって息をつく暇がなかった。こと最終決戦に至っては、筆者がゲームに対してはやや涙腺が緩いということは置いておいて、その”熱い”展開に涙目になりながらプレイしていたのも事実だ。
昨今のゲームのストーリーは奇抜なものも少なくなく、そのような作品は賛否が分かれやすい傾向にある。その一方で、「そうそう。こういうのでいいんだよ。」と多くのプレイヤーに思わせるであろう本作のストーリーは、これもまた1つの完成形であると言える。
掛け合いフルチェイン!
発売前に配信されていた体験版の時点で、私が最も気に入っていたのは「仲間たちの掛け合い」だ。
移動や戦闘をしている際に仲間たちの会話が聞こえてくるゲームは多いが、本作はその量と質が一線を画している。例えば戦闘中には、スキルを使った仲間が決め台詞を言うと仲間がそれを褒めていたり、行動不能に陥った仲間が何かつぶやくと別の仲間が励ましたりと、状況に応じた会話が頻繁に聞こえてくる。
特に驚いたのは、本作には20を超える多数のプレイアブルキャラクターが登場するにも関わらず、彼ら一人一人が仲間のことを名前で呼び合っている点だ。他の作品では、どのキャラクターに対するセリフでも問題が無いようにあえてセリフ中では名前を呼ばないようになっていたりするものだが、本作はそのような妥協をしていない。
辛く険しい旅路だが、互いを想い合うキャラクターたちの姿が印象的であった。
戦闘に関しては、タイトルの通り「リンク」が重要だ。
敵を攻撃していると仲間との「リンクアタック」が発動し、離れた場所にいても瞬時に敵に近づき強力な一撃を与えることができる。また、「リンクアタック」を繰り返しているうちに「リンクカウンター」が蓄積されていき、ゲージが満タンになると「リンクタイム」が発動し、敵が一定時間スローになり大ダメージを狙えるという寸法だ。
ボスの体力はそこそこ高く、ただ攻撃を連打するだけだと長期戦になってしまいがちなため、リンクとスキルを組み合わせて高い瞬間火力を出すことを考えよう。
また、「奥義ゲージ」が溜まると「リンク」とは別に「奥義」といういわゆる必殺技を使用できる。奥義ゲージは仲間ごとにあり、一人が奥義を使うと仲間が次々とそれに続き、「チェインバースト」という奥義の連携技が派生する。
「チェインバースト」の演出はなかなか粋で、戦闘中に奥義ゲージが溜まりそうになると毎回ワクワクしていたものだ。ボスの残りHPがギリギリまで減った際に奥義を使用し、本来であればHPを削りきれるダメージを与えていても、チェイン時の演出を最後まで見せてくれる点も評価したい。
リンクカウンターや奥義ゲージを使い切り、通常攻撃やスキルしか使えないタイミングではなかなか火力が出せずもどかしくなるが、そのもどかしさも「チェインバースト」で一気に吹き飛ばせるくらい爽快感にあふれた戦闘になっている。
蒼い空は広いんだ
本作のメインストーリーは15~20時間ほどでクリアできる。これはムービーをスキップせずにサイドクエストもこなしつつ進めた場合の時間であるため、エンディングまでのボリュームは控えめと言える。
しかし、これを聞いてボリュームが少ないと考えてしまうのは早計だ。
昨今のゲーマーからすると「ストーリーをクリアしてからが本番」というフレーズは耳に胼胝(たこ)ができるほど聞き慣れたものだろう。中には些か誇張した謳い文句であることもあり、懐疑的になっている方もいるかもしれないが本作に関しては安心してほしい。本当にストーリーをクリアしてからが本番だ。
まず、メインストーリーのクリア後まもなく新たな旅が始まるが、この追加ストーリーをクリアするには20時間程度かかると言われており、メインストーリーは物語全体の半分に過ぎないことがわかる。
追加ストーリーを進めていると騎空士としての名声が上がり、難易度の高いサイドクエストが解放されていく。
では、追加ストーリーをクリアした後はどうなるかと言うと、従来のストーリー主導のRPGから一変して「モンスターハンターシリーズ」のようなクエスト受注型のプレイスタイルになる。
追加ストーリーのクリア後はより高難度なサイドクエストに挑戦できるようになるが、これらのクエストに出現する敵は段違いに強力なため、これまでよりもキャラクターの育成について深く考える必要が出てくる。そのため、様々なサイドクエストで経験値や素材を入手し、新しいアビリティを習得したり武器を強化したりすることになる。
本作の育成要素はステータスやアビリティ、武器作成・武器強化、ジーン(特別な効果を付与できる装備)など多岐にわたる。そのため、40時間程度のストーリーを終えると、他の「ハンティングアクション」に追随を許さないほどのやり込み要素を持ったハンティングアクションゲームが始まると考えてよい。
本作がどれほどボリューミーな作品であるかおわかりになっただろう。
努力はノートに宿る
さて、本作は「グランブルーファンタジーシリーズ」未経験でも十分に楽しめることは先に述べたが、それについてもう少し触れよう。
昨年発売された「FINAL FANTASY16」には、現在進行中のストーリーに関係が深い用語を解説する「アクティブタイムロア」というシステムが搭載されており、今までになく親切なシステムとして好評であった。
本作にもそれと似た機能が用意されており、テキスト中でわからない専門用語が出てきた際に□ボタンを押すと会話が一時停止し、その用語の解説を見ることができる。
また、後述するように用語辞典も存在するため見逃したり忘れたりしても問題ない。もっとも、わざわざ用語辞典で確認するのが面倒くさいと思う方もいるかもしれないが、先の機能のおかげで後から見返さなくともストーリーを十分に理解できたため安心してほしい。
また、テキストやムービーの親切設計としてスキップ機能が挙げられる。「スキップ機能なんて、今時どのゲームにもあるじゃないか。」と思われるかもしれないが、本作はスキップボタンを押すとそのシーンの簡単な要約が表示されるため、概要だけを理解して手早く進めるということも可能だ。
また、ルリアが旅の思い出をまとめた「ルリアノート」には、ストーリーや登場人物、用語の解説はもちろん、全てのエネミーや武器の説明なども記録されているほか、称号やBGMといった要素も搭載されている。ほんわかしたイラストが描かれた背景が本作のイメージを象徴しているようで、個人的にお気に入りだ。
御覧の通りルリアノートの記載はかなり事細かく、旅の合間にふと読んでみたくなるクオリティだ。きっと開発陣もルリアと心をリンクさせながらテキストを綴ったのだろうと考えると、「グラブル」への愛と熱意がひしひしと伝わってきた。
ゲームにおける収集要素や記録要素は、ストーリーや戦闘といった要素に比べると蔑ろにされがちだ。しかし、「神は細部に宿る」という言葉があるように、これら些細なコンテンツまで抜け目なく仕上がっていることから本作には開発陣の努力が宿っていると感じた。
きっとグラブルが好きになる
一つ惜しい点を挙げるとすると、「キャラクターカラーパック」というアイテムを使うとキャラクターの衣装のカラーを変えることができるのだが、ムービーにまでは適用されていないようで頻繁に衣装が切り替わっていたのは苦笑してしまった。
さて、そんなお茶目な仲間についてより深く知ることができるコンテンツも用意されている。
「フェイトエピソード」というコンテンツでは、「キャラクター解放チケット(ストーリーには登場しないキャラクターを操作できるようにするアイテム)」で仲間になるキャラクターも含めた全てのキャラクターに関して、主人公の仲間になる以前の話や本作で訪れた街で起こった話などが語られる。
フェイトエピソードはテキストが音読される形式であることが多いが、中には物語の一環として戦闘を追体験する回があるほか、エピソードを進めることでキャラクターのステータスが少しずつ成長していくため、キャラクターを知るためのコンテンツとしては申し分ない。
また、アニメ『GRANBLUE FANTASY The Animation』では、空の果てを目指す主人公たちの冒険の序章として、グランとルリアの関係性や故郷の島を旅立った理由を知ることで、さらに本作を楽しむことができる。
無料公開期間は終了してしまったが、各種動画配信サイトで視聴できるため、原作を知らないという人や原作を振り返りたいという人にオススメだ。
概して、本作からは「グランブルーファンタジー」を好きになってもらいたいという熱意がひしひしと感じられ、普段モバイルゲームをプレイしない私には疎い存在であった「Cygames」には感服した。同社は「グランブルーファンタジーリリンク」により、蒼く広い空で確かな一歩を踏み出したのだ。
コメント